本研究における我々の目的は、エイズ治療の分野で問題となっている潜伏状態のHIVの排除を可能にする新しいエイズ治療薬「HIV感染細胞特異的にアポトーシスを誘導するアデノ随伴ウイルス」の開発を行なうことである。現在のエイズ治療の主流であるHAARTの問題点の一つとして、この治療法に用いられる逆転写酵素阻害剤・プロテアーゼ阻害剤等の薬剤はHIVの増殖を抑制できるが、HIV感染細胞自体は排除できないという点が挙げられる。特に、HIVが感染する細胞の一つであるメモリーT細胞は非常に長い寿命を持ち、このため一度HIVに感染すると感染者は永続的にHAARTを続けなければならない。今回我々は、ワクチンとは異なる方法で感染細胞を排除する新しい方法を考案した。それが「HIV感染細胞特異的にアポトーシスを誘導するアデノ随伴ウイルス(AAV)」(図1)である。H19年度には、AAVキャプシド部分遺伝子をIgG結合部位ペプチドに置き換え、DNAシーケンシングで確認した。また、HIVのLTRプロモーターがあるレポーター遺伝子EGFPを発現するシャトルプラスミドも作製した。そのシャトルプラスミドや改変したAAVキャプシドプラスミドなどを用いてAAVベクターを作製した。同様の方法で、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子を発現する、キャプシド改変したAAVも作製した。それらのAAVベクター力価は従来のAAVベクターの力価とほぼ同程度で、キャプシド改変を行なっても、ウイルスの性質は変化しないことが明らかとなった。
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