研究概要 |
宿主のユビキチン修飾系および小胞輸送系は、ウイルスの細胞内侵入から最終的な成熟ウイルスの放出に至る一連のウイルス増殖においても密接に関与していることが推察されているが、その詳細は未だに不明の点が多い。AMSH,AMSH-LPは独立した遺伝子にコードされ、いずれも輸送に関わるユビキチン修飾(K63)特異的な脱ユビキチン化酵素であり、MPNドメインに酵素活性があることが判明した。これら脱ユビキチン化酵素はESCRT複合体に会合することにより、ウイルス蛋白を含む標的蛋白のユビキチン化を制御し、ウイルス増殖に関わっている可能性が高い。そこで293T細胞に対し酵素活性を欠損したAMSHおよびAMSH-LP、あるいは各分子に対するshRNAを導入してノックダウンを行い、さらにHIV-Gagを導入してウイルス様粒子(VLP)の出芽をELISA法、および超遠心-ウエスタンブロット法により検討した。その結果、1)不活性型AMSHの導入によりVLPが軽度低下したが野生型では変化がなかった。2)AMSH-LP(野生型、不活性型)の過剰発現ではGag量に変化がなかった。3)AMSHとは異なる脱ユビキチン化酵素であるUBP-YはVLPに与える影響が少ないこと、4)AMSHと拮抗するC-CBL(野生型、不活性型)の過剰発現によるGag量の変化は軽微であった。以上の結果から、脱ユビキチン化酵素AMSHはHIVウイルス粒子形成を正に制御する可能性があるものの必須ではないことが判明した。
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