研究課題
悪性リンパ腫はエイズ患者における重要な死因の一つであり、本邦では抗レトロウイルス療法にもかかわらず、近年、増加傾向にある。特に最近増加しているエイズ関連リンパ腫の病型はエプスタイン・バーウイルス陰性のびまん性大細胞性B細胞リンパ腫であり、これらのリンパ腫の発症機構はよく分かっていない。我々はHIVがリンパ腫細胞のSTAT3遺伝子にインテグレーションした症例を見出したことから、HIVインテグレーションとリンパ腫発症の関連について検討を行った。10例のエイズ関連リンパ腫サンプルを検索した結果、宿主のゲノムにHIVがインテグレーションしている症例は見あたらず、リンパ腫におけるHIVインテグレーションはきわめてまれな現象であることが確認された。また、免疫組織化学でSTAT3の発現をエイズ関連リンパ腫9例、非エイズ関連リンパ腫15例につき検討したところ、7例のエイズ関連リンパ腫ではSTAT3が細胞質に発現しており、一方、非エイズ関連リンパ腫ではSTAT3の発現はほとんど見られなかった。これらの結果から、HIVのインテグレーションはエイズ関連リンパ腫ではきわめてまれな現象であるが、STAT3の核内、または細胞質における貯留はエイズ関連リンパ腫の発症と何らかの関連があることが示唆された。今後、さらに症例を収集し、インテグレーションの頻度の検討や、HIVがB細胞に感染するメカニズムの検討を行う。
すべて 2007
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ページ: 79-85
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