研究概要 |
本研究ではエイズ関連リンパ腫において、HIV感染とリンパ腫発症の関連を明らかにすることを目的とする。本年度はエイズ関連リンパ腫症例におけるHIVインテグレーションの頻度の検討を行った。検索対象は国立感染症研究所に凍結保存してある症例および、東京地区のエイズ拠点病院から提供された症例合計20例である。研究計画は国立感染症研究所ヒトを対象とする医学研究倫理審査委員会の承認を得た。各症例からDNAを抽出し、HIVの他に、EBV,HHV-8を標的にPCRを行った。20例中6例にHIVが検出され、うち1例に1細胞当たり3コピー程度のHIVが検出された。同時に行ったEBV、HHV-8の検出ではEBVは18例が陽性、HHV-8はすべて陰性であり、ウイルスごとに陽性率が異なる結果となった。HIVのインテグレーション部位を決定するために、ゲノムウォーキングを行った結果、ヒトX染色体q28にインテグレーションが確認された。HIV-LTRに続く配列はポリA配列を含んでいたが、ENSEMBLEでの検索の結果では周辺に既知の遺伝子は登録されていない。未登録遺伝子のopen reading frameが近傍にあり、その3'末端にHIVがインテグレーションしている可能性が示唆された。また、本症例は肺に発症したエイズ関連リンパ腫であったが、免疫組織化学でHIV-p24の発現はリンパ腫細胞よりも周辺の肺胞マクロファージに認められたことから、HIVインテグレーションはマクロファージ内で起こっている可能性が高く、リンパ腫発症との関連は不明である。これらの結果から、リンパ腫におけるHIVインテグレーションはきわめてまれな現象であることが示唆された。
|