研究概要 |
活性化型NK細胞受容体を介したNK細胞の機能におけるCARD9とCARMA1の役割について検討した結果,活性化型NK細胞受容体を介したNF-κB活性化にCARD9は関与せず,抗原受容体と同じくPKC→CARMA1-Bcl10システムが関与することが明らとなった。このCARMA1-Bcl10シグナリングは,活性化型NK細胞受容体を介したサイトカイン/ケモカイン産生に必須であったが細胞傷害活性には関わらないことも判り,NK細胞の機能発現に必要なシグナルの二分性が明らかとなった。さらに,NK細胞と樹状細胞とでITAM受容体シグナルの性質を比較解析することにより,両細胞ともPKCを介するNF-κB活性化はCARMAIに依存するが,樹状細胞のITAM受容体はCARMAIを利用せず,PKCには依存しないCARD9依存性経路によってNF-κBを活性化すること,さらに,これら2つの経路に互換性はなく,各々が本来働くべき細胞系統以外ではITAMシグナルを伝達出来ないことが判った。これらの研究により,Bcl10はどの細胞種においてもITAMを介するNF-κB活性化に必須であるが,NK細胞やT/B細胞などのリンパ系細胞ではPKC活性に依存したCARMA1-Bcl10複合体が,マクロファージや骨髄系細胞ではPKC活性に依存しないCARD9-Bcl10複合体が働くことを我々は解明した。また,試験管内でマクロファージをリーシュマニア原虫に感染させた際の炎症性サイトカインの産生がCARD9欠損マクロファージでは著しく低下することを見いだした。CARD9欠損マウスは、リーシュマニアの足蹄皮下感染実験において、感染初期の足蹄の腫脹が野生型マウスと比較して明らかに減少した。 この結果は、CARD9を介する経路が原虫に対する自然免疫反応に関与することを示唆した初めての発見である。
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