研究概要 |
T細胞の活性化は、T細胞受容体(TCR)からのシグナルによって惹起されるが、T細胞が細胞分裂やサイトカイン分泌などのエフェクター機能を獲得するためには、TCRの他に副刺激受容体からのシグナルが必須である。中でもCD28は免疫アレルギー疾患や癌の免疫療法などへの臨床応用が試みられている一方、そのシグナル伝達系は不明な点が多く、CD28シグナルを明らかにすることは、T細胞活性化のメカニズムの解明にも重要である。「免疫シナプス」は、情報伝達の場としてT細胞と抗原提示細胞との間に構築され、TCRが集まる中心部位central-supra molecular activation cluster(c-SMAC)と、接着分子が集まる周辺部位peripheral(p-)SMACを有する同心円構造である。我々は、免疫シナプスが、TCR数十個からなるシグナル分子の集合体「TCRマイクロクラスター」によって構成されていることを発見した(Nature Immunology,2005)。TCRマイクロクラスターは、キナーゼやアダプター分子などのシグナル伝達分子と会合することで、TCRシグナルの最小単位として機能している。また、近年我々は、CD28もTCRと共にマイクロクラスターを形成し、特異的なキナーゼProtein kinase Cθ(PKCθ)をリクルートすることでT細胞の増殖やサイトカイン産生に寄与していることを発見した(Immunity,2008)。更に、免疫シナプスの形成後、c-SMACの外縁にPKCθが会合するCD28の新たなコンパートメントを明らかにすると共に、T細胞活性化の維持を担うというc-SMACの新たな機能を見出した。これらの発見から、T細胞の活性化は、時間的空間的に形成されるTCR-CD28マイクロクラスターによって協調的に制御されていることが明らかとなった。
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