免疫応答における活性化と抑制のバランス維持は、自己免疫疾患を予防し、適切な強度と時間軸で免疫応答を誘導するために重要な機構であり、抑制性レセプター群が重要な役割を果たす。Ly49Qは細胞内領域にITIMを有する抑制性レセプターで、プラスマ樹状細胞、マクロファージ、好中球に限局し、MHCクラスIとのシス相互作用を介して炎症制御に関わる。Ly49Q欠損マウスおよび抑制性モチーフ内のチロシンをフェニルアラニンに置換した恒常的不活性型Ly49Q(Ly49QYF)を発現するトランスジェニックマウスを用いてLy49Qが免疫恒常性維持に果たす役割を解析した結果、Ly49Qが炎症早期の好中球およびプラスマ樹状細胞のケモタキシスを制御することを明らかにし、その分子機序としてLy49Qはケモカインに応答したこれらの細胞の極性形成を制御することを見出した。さらに、Ly49Qは脂質ラフトに局在し、フォスファターゼの活性に依存してエンドサイトーシスされ、それによって炎症性細胞のラフトの取り込みと輸送を制御していることを見出した。ラフトは様々なシグナル分子を会合し、シグナル伝達の場として多くの細胞機能に重要な役割を果たしている。Ly49Q依存的に取り込まれたラフトは、細胞内の早期エンドソームへと移行し、さらにエンドソームにおいてMAPキナーゼの活性化を制御していることが強く示唆された。Ly49Qは炎症性細胞に特有のラフトの輸送制御を担う抽制性レセプターであり、細胞膜からのシグナルの時空間的制御に関わると考えられる。
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