研究課題
平成20年度の研究において明らかになったポイントは以下の通り。「人工呼吸器を着けないで欲しい」と「私の希望書」に記してあったとしても、その背景にある理由をしっかりとつかむことなく、ただ字面だけを見て「呼吸器は希望していない」と拙速に判断するようなことがあってはならない。あくまでも事前指示書は、患者にとって何が最善の医療かを、医師のみで決めるのではなく、患者家族も交えてチーム全体で話し合うためのひとつの「ツール」であって、決して「文書だけ」を独り歩きさせるようなことがあってはならない。その意味では、事前指示書に強い法的拘束力を付与するような形での法制化は、「文書だけ」を独り歩きさせることになりかねず、現場の実情からかけ離れたものになってしまうだけでなく、結果として、常に揺れ動く患者自身の心理に対する無配慮によって、患者の真の希望を奪い取ってしまう危険性があると言わねばならない。また、倫理コンサルテーション・倫理コンサルタントの果たすべき役割と課題に関する「利用者」のアンケート調査結果の逐語録を分析する中で以下の点が明らかとなった。特徴的なカテゴリーとしては「医療従事者の多忙さ」、「倫理的なことを語るにあたっての心理的抵抗感」、「初めて話す場合のコンサルタントの人間性に対する不安」等が注目に値する。さらに「倫理」という言葉の持つ様々な「ネガティブ・イメージ」のため、参加者は倫理的な発言を行う難しさと「敷居の高さ」を感じていたが、回答者全員が第三者的立場からの迅速な臨床倫理サポート(臨床倫理コンサルテーション)の必要性を認めていた。医療従事者の「バーン・アウト予防のためにも有益」という発言も多く見られたことからも、現場の医療スタッフに対する組織的・体系的な「倫理コンサルテーション」の体制を早急に確立することが必要であるといえる。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Eubios Journal of Asian and International Bioethics Vol. 18, No. 2
ページ: 34-40
生 命 倫 理 通巻19号
ページ: 98-105
General Medicine Vol. 9, No. 2
ページ: 47-55