研究分担者 |
平井 さよ子 愛知県立看護大学, 看護学部, 教授 (70290046)
坂梨 薫 横浜市立大学, 医学部・看護学科, 教授 (60290045)
安川 文朗 同志社大学, 大学院・総合政策科学研究科・医療政策・経営研究センター, 所長 (90301845)
福田 敬 東京大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (40272421)
賀沢 弥貴 愛知県立看護大学, 看護学部, 助教 (10363954)
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研究概要 |
1.目的:転倒防止対策は,殆どの病院で実施されているにもかかわらず,わが国では科学的に信頼性と妥当性の検証された転倒防止対策は報告は少ない.今年度は,急性期病院における入院患者の転倒予測ツールを開発、および、転倒防止マニュアルの検討、実施状況の分析、費用算定項目と算定方法の検討を行った. 2.方法:転倒予測ツールの開発では、平成19年4月12日から9月27日に716床の公立病院の入院患者を対象に前向きに調査を実施した.対象者は小児科,産科,NICU,ICUを除く15歳以上の入院患者とした.転倒予測ツールの開発にあたり,先行研究のレビューに基づき,転倒危険因子として使用頻度が高く多面的な12領域34因子により構成される調査票を作成した.多重ロジスティック回帰分析のステップワイズ法により危険因子を取捨選択した.オッズ比に基づいて因子の重み付けを行った.また、泉らの開発したツールとの相関係数により併存妥当性を検証し,さらに感度と特異度を比較した.転倒防止マニュアルの作成では、英国のNational Patient Safety Agencyの転倒防止対策のメタアナリシスの論文や米国の退役軍人病院のマニュアルなど各国のマニュアルの検討し、対象病院の転倒患者の特性と転倒防止対策の実施状況を統計解析した。費用算定項目と算定方法について文献検討を実施した。 3.結果:K病院の入院患者2,191名の調査データが本研究の分析に用いられた.対象者の平均在院日数は11.3±14.5日(範囲0.5・191日)であり,平均年齢64.4±17.4歳(範囲15・101歳)だった.調査期間中の転倒者は,対象者2,191名のうち55名(2.5%)だった.多重ロジスティック回帰分析により,(1)麻薬(6点),(2)排泄介助(5点),(3)排泄見守り(4点),(4)自立心が強い(4点),(5)抗うつ薬(4点),(6)転科・転棟・転室(3点),(7)過大評価(3点),(8)筋力低下(3点),(9)バランス障害(2点),(10)点滴・酸素吸入(2点),(11)ベッド上安静(1点),(12)頻尿・下痢(1点),(13)転倒恐怖感(1点),(14)視力障害(1点)の14因子からなる転倒予測ツールが開発された.泉のツールとの相関係数はモデル1が0.682,モデル2が0.672であった(p<0.10).アセスメントツールを開発する場合,相関係数が高すぎると新しく開発する意味がないため,泉のツールとの適切な併存妥当性を示すことができた.モデル1はカットオフポイント5点で感度74.5%,特異度76.0%であり,モデル2はカットオフポイント4点で感度81.8%,特異度68.5%と高い感度と特異度を備えている.また,泉のツール(感度72.7%,特異度71.9%)と比較してより高い予測精度を備えており,転倒予測において効果的であると考えられた.倒防止対策の実施状況では、22項目の防止対策ではベッドの高さ調整・整頓は9割以上の患者に実施されていたが、ヒッププロテクタの使用はなかった。各対策を実施した群では転倒者は19〜0%であった。一方、転倒者53名のうち、各対策を実施していなかった転倒者は3.6〜96.4%であり、各対策を実施していて転倒したものは2〜19%であった。これらの結果に基づき患者のリスクに応じた防止対策を確実に実施するためのマニュアルを開発する。
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