本研究は、臨床研修医を対象に、(1)精神科的問題に対する偏見や差別の除去、(2)プライマリーケアで必要な精神医学的知識・スキルの有効かつ効率的な習得法として、短期間の構造化された研修プログラムの方法論を確立することを目的としている。 本年度は、特にパイロット・モデルとしてのプログラム実施と有効性の検証、臨床研修医以外の領域に対するプログラム実施、マニュアル改訂と視覚教材制作、学術発表による普及啓発を目的とした。 具体的には研究者・研究協力者により、1)オーストラリアで既に実践されているMental health firstaid(以下、MHFAと略)プログラムをもとにして九州大学医学部の臨床研修医に対して、うつ病事例への対応に関する研修を実施し、2)MHFAプログラムの効果の調査を目的とした研修参加者と非参加者への調査を行った。また、3)MHFAプログラムのマニュアルを改訂し、4)プログラムの教育効果を高めるためにMHFAプログラムの視覚教材を制作した。加えて、5)自殺対策従事者や地域精神保健従事者に対するMHFAプログラムの実施と、6)MHFAプログラムに関する学術発表により、プログラムの普及啓発を行った。 本研究で作成した研修プログラムは、臨床研修医が精神疾患に初期対応する上でのスキル向上に効果的な方法論であると考えられる。特に視覚教材も取り入れたプログラムの実施は、有効性を高めることが期待される。また、同時に精神障害者対応が必要とされる他領域の従事者に対する効果的な方法論であることが期待される。 来年度以降さらに本研究を推進し、本プログラムの有効性・妥当性のより詳細な検討および実証に基づいた、より効果的なプログラムの開発、他領域への方法論の応用をすすめていきたいと考える。
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