新医薬品の従来の治療法に対する増分費用効果比を求め、その額が一定額以下であれば、その新医薬品を医療保険制度の対象として認めてもよいとする考え方が欧米では広く取り入れられているが、問題は、「一定額」をどのように決めるかである。この一定額を決める試みとして、我が国特有の薬価制度の下での類似薬効比較方式における加算額に注目した。 平成9年6月から平成19年3月までの間に薬価基準に新たに収載され、薬価算定された新医薬品、330成分551品目(規格)について検討を行った。まずこれらのうち、比較臨床試験結果が入手でき、かつ類似薬効比較方式で算定され有効性に基づく加算が行われた19成分21薬効について増分費用効果比を求めた。その結果、1日当たりの増分費用効果比は5円から56607円と大きくばらついていた。この違いは、適応症による違いというよりも、経口剤、注射剤、外用塗布剤という剤形による違いや、薬価算定方法の違いを反映した算定時期による違いが大きいものと思われた。具体的には、外用塗布剤は2成分で5円及び6円であるのに対して、14年8月以降に算定された注射剤は3成分で6118円から56607円であり、算定時期については、18年以降の経口剤が229円から604円であるのに対して、15年9月以前は29円から118円であった。 一方、5成分が市場に導入されているスタチン製剤では、最初に導入されたプラバスタチンからの1日当たりの増分費用効果比をみると、0円、18円、36円、36円となり、0円となったフルバスタチンの増分効果を差し引いたネットの増分効果について再計算すると、22円、48円、52円と比較的近い値が得られた。 今後、さらに事例を追加することにより詳細な分析が可能になると思われる。
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