新薬の現治療法からの増分費用効果比が一定額以下であれば医療保険の対象として認めるという考え方が欧米ではあるが、「一定額」をどのように決めるかが問題である。この一定額を決める試みとして、我が国の薬価制度の下での新薬の薬価算定額に注目した。 平成9年6月から平成20年9月までの間に薬価算定された新薬、401成分のうち、比較臨床試験が行われた248成分を検討の対象とした。これらについて、PMDAのHP上に公表されている審査報告書及び申請資料概要、臨床試験の公表論文、添付文書、インタビューフォーム等を収集し分析に用いた。治療目標に到達した患者の割合を臨床効果とすることとし、それを表していると思われる最終全般改善度、治療成功割合、目標達成率、奏効率、HIVウイルス量等を用いた。臨床検査値の変動を評価指標としているものについては、治療ガイドラインに示された治療目標値に到達した人の割合を算出し、それを用いた。対照薬との臨床効果の差を増分効果とした。新薬の薬価は薬価収載時のもの、対照薬の薬価は新薬が薬価基準に収載された時点のものを使用し、プラセボの薬価は0円した。臨床効果判定日までの日数を投与日数として対照薬との薬価差を求め増分費用とし、増分費用効果比を算出した。これを臨床効果に有意差があるもの、投与経路別、薬効分類別、疾患領域別等で分類したが、増分費用効果比に関連性は見られなかった。 次に、さまざまな論文からそれぞれの疾患に対する効用値を収集し、これを効果として増分費用効果比を求めた。増分費用効果比は、効用値0.4〜0.59の疾患で1000万円、0.6〜0.79で620万円、0.8〜1.0で110万円を最大値としてそれぞれの分類である程度の範囲内に収まり、新薬の効能効果を領域を考慮せず効用値で分類し、それぞれについて判断基準となる「一定値」を求めることが妥当なのではないかと考えられた。
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