研究概要 |
1,本研究の目的は以下の3点である。 1)A病院における亜急性期病床の運営状況を調査し、全国調査との比較を通して亜急性期病床における在宅支援のあり方を検討する。2)事例検討を通して亜急性期病床における在宅支援マネジメントを検討する。3)フランスにおける「在宅入院制度」についてヒアリングを行い、在宅支援について新たな知見を得る。 2.結果の概要:1)亜急性期病床の運営状況:平成20年4月〜平成21年1月までの10ヶ月間の亜急性期病床の運営状況は次の通りである。かっこ内は2005年の全国調査結果である。実人数41人、平均年齢79.5歳(75.6歳)、平均在院日数29.5日(28.5日)、骨関節疾患が27人で最も多かった。入室目的は、集中的リハビリテーションが47%と多い。在宅復帰率82%(87%)、病床利用率55%、転帰は軽快が80%であった。以上の調査結果から、亜急性期病床では、高齢の入院患者が、まず一般病床に2週間入院してから、亜急性期病床に1ヶ月程度入室し、集中的なリハビリテーションと退院調整を受けて、在宅復帰するというパターンが典型的であった。2)亜急性期病床の在宅支援マネジメント:41人の患者の入院から退院までのプロセスを分析した結果、(1)スクリーニング基準の 明確化、(2)患者・家族への動機付け支援、(3)多職種による亜急性期総合診療計画書の作成、(4)カンファンレンスによる目標の共有化、(5)住宅など環境整備、(6)試験外泊の実施、(7)モニタリング・評価というケアマネジメントのプロセスを愚直に踏むことが在宅支援に効果的であった。3)フランスにおける「在宅入院制度」の現状と課題:パリ公立病院協会付属在宅入院連盟ヘヒアリング調査を行った。その結果、平均在院日数は18.3日、自宅看取り率12%、対象疾患は癌の終末期ケア、抗癌剤の投与、神経難病のケアが多かった。在宅入院制度にはケアマネジメント機能がないため、介護サービスは別に提供されるという非効率性はあるが、医療ニーズの高い患者への集中的ケアマネジメントや重層的な訪問看護により、在院日数を短縮化しつつ質の高い在宅支援を提供している。
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