心肥大突然死モデル犬の特徴を、イオンチャネルの発現レベルおよび心血行動態や神経体液性因子の挙動を心臓電気生理学的特性とともに解析した。心肥大突然死モデル動物の心室筋におけるイオンチャネルの発現を定量的PCR法にて計測したところ、遅延整流K^+チャネル、一過性外向きK^+チャネルおよび内向き整流性K^+チャネルのmRNAレベルが正常犬に比べて減少していた。本モデル動物の心血行動態の特徴はForresterの分類で1類に相当し、アドレナリン、アンギオテンシンII、アルドステロン、心房性ナトリウム利尿ペプチドおよび脳性ナトリウム利尿ペプチドの血中レベルの上昇が観察され、代償された慢性心不全の状態にあることが認められた。心肥大突然死モデル動物の心室筋再分極時間は極度に遅延しており、定量的PCR法で計測した心筋K^+チャネルのmRNAレベル減少を反映する結果であった。また、心室の興奮頻度が遅いほど心筋再分極時間は延長しており、致死性不整脈が発生しやすい電気生理学的特徴を有することが確認された。これらの実験結果は、心筋再分極異常に起因する心臓突然死の危険を回避する薬物治療戦略を構築する上で重要な情報であり、次年度は本動物モデルの心筋イオンチャネル発現、心血行動態、神経体液性因子および心臓電気生理学的特性に関するクロストークの機序を解明し、心臓突然死の危険を回避するアップストリーム治療法について詳細に検討する予定である。
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