慢性房室ブロック術により作成した心肥大突然死モデル犬に選択的L型カルシウム拮抗薬アムロジピンおよびアンジオテンシン受容体拮抗薬カンデサルタンを、L/N型カルシウム拮抗薬シルニジピンと同じ処方(4週間内服)で投与し、これら薬剤の心筋再分極異常に対する改善効果を比較検討した。その結果、アムロジピンとカンデサルタンには心筋再分極異常に対する治療効果は認められず、シルニジピンの治療効果はN型カルシウムチャネル阻害作用に関連した本薬特有の作用であることが明らかとなった。このシルニジピンの効果は急性効果としては現れず、2週間以上の服用が必要であった。近年提唱されている催不整脈指標Beat-to-beat variability of ventricular repolarization(心電図QT間隔の1拍ごとの変動の大きさ)を用い、不整脈誘発の危険度を薬物投与前後で比較した。この指標は致死性不整脈誘発の第一段階であるトリガー発生との間に相関性が認められている。その結果、アムロジピン群とカンデサルタン群では有意な変化は観察されなかったが、シルニジピン群ではQT間隔の変動値に有意な減少が認められた。この成績は、シルニジピンは致死性不整脈のトリガーが誘発される危険な状態を回避できることを示している。以上より、長期間のN型カルシウムチャネル阻害は、心筋再分極異常を示す患者に対して致死性不整脈発生の危険性を軽減する治療法として期待できることが示された。
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