上皮成長因子(EGF)受容体チロシンキナーゼ阻害薬gefitinibは肺非小細胞癌の分子標的薬として開発され、奏効例での効果は著しい。しかし、薬剤性肺障害の有害事象等もあるなど臨床上の課題も多い。申請者はgefitinibの血中濃度の測定法(HPLC法)を樹立し、gefitinib投与後の測定を行ったところ、患者間で血中gefitinib濃度(トラフ値)の散布度が大きいことを見いだし、なんらかの因子が薬物動態と関わっている可能性と薬物動態の差異が臨床効果や有害事象と関連するのではないかと仮説をたて、その検証を行った。 申請者は、今年度中にgefitinibの血中薬物動態と臨床効果(奏効率・生存率)、有害事象(特に肺障害)との関連性について検証を進めている。その結果、gefitinibのD3、D8の血中濃度(トラフ値)とその臨床効果および肺臓炎といった有害事象については相関関係がないような傾向を示すデータがそろってきている。一方で、EGFR-TKI変異と血中濃度との相関関係も認めないようなデータが集まりだした。一方で、D8/D3値という、血中濃度の立ち上がりの指標となる値と臨床効果については、一部の症例で相関がありそうな傾向が出てきた。本研究は規在症例集積を進めているところであり、さらに症例を集め、統計学的な信頼性の高い解析を行う予定としている。
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