研究概要 |
オピオイド鎮痛薬の薬効には大きな個人差があり、オピオイド鎮痛薬の薬物動態関連遺伝子、受容体遺伝子の遺伝子多型が関与している可能性がある。オキシコドンおよびフェンタニルを使用している癌患者(43症例)において、鎮痛効果(VAS)ならびに眠気、嘔気・嘔吐、便秘の副作用に及ぼすμオピオイド受容体(OPRM1)遺伝子多型(17C>T,118G>A)の影響について同意取得の上で検討した。また、健常者(219名)においてOPRM1遺伝子型(118 A/A, G/A, G/G)の出現頻度を検討した。それぞれ34%,49%および16%であり、人種差が存在していた。またOPRM1 17C>Tについては全症例がC/Cであった。オピオイド鎮痛薬投与によりVASは6.46±1.54から1.62±1.42に有意に減少した。VASの減少率はOPRM1遺伝子型間に差異を認めなかった。一方、眠気の出現率はA/AとA/Gに比しG/G群では有意に低値であった。また嘔気・嘔吐の出現率においてもA/Aと比しG/Gでは0%であった。さらに、オピオイド鎮痛薬による鎮痛効果が認められなかった肺癌患者においてμオピオイド受容体(OPRM1)の遺伝子解析をダイレクトシークエンス法により行った。その結果、5'flanking reglonに2か所の欠損、およびExon1の-172G>Tおよび118A>Gにおいてヘテロ型の変異を見出した。さらにlntron2において2か所のヘテロ型変異(IVS2 134A>G,IVS2 691G>C)を有することが明らかとなった。以上の結果からOPRM1遺伝子型のGアレル群においてはオピオイド鎮痛薬の薬効、副作用の発現に関与すると考えられた。しかし、その他の変異については今後の検討が必要であろう。
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