研究概要 |
1.本邦で脈派伝播(pulse wave verocity,PWV)測定の標準法として用いられているbrachial-ankle(ba)PWV測定法と,主として欧州での標準法であるcarotid-femoral(cf) PWVを同一被験者において測定し、再現性,両測定法による測定値の相関、内皮機能との相関などを検討した。 Cf PWVとbaPWVは相関せず、現時点ではアウトカムとの関連の報告があるcfPWVが標準法として用いられるべきであることが示唆された。またこれまでのCompliarを用いたcfPWV測定法よりも本邦で開発された測定機器を用いる方が再現性に関して優れていることを報告した。 2.遊離脂肪酸負荷によるメタボリックシンドローム、内蔵肥満を想定したヒトインスリン抵抗性実験系を立ち上げ、薬効評価を行った。健常人に脂肪乳剤をヘパリンとともに静注することにより、約40%M値(インスリン感受性の指標で、単位時間あたり必要なグルコースの投与量で表される)が低下した。この系においてアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)低用量、高用量が遊離脂肪酸によるインスリン抵抗性に及ぼす影響を二重盲検交差法で検討した。ARBは用量依存性にインスリン抵抗性を改善した。この結果は遊離脂肪酸によるインスリン抵抗性にレニンーアンジオテシン系が関与していること、またこの系がインスリン抵抗性に対する薬効評価系の一つになる得ることを示唆した。 3.遊離脂肪酸負荷によるメタボリックシンドローム、内蔵肥満を想定したヒト白血球活性化実験系を立ち上げ,薬効評価を行った。健常人に脂肪乳剤をヘパリンとともに静注することにより、白血球の接着亢進、ミエロペロキシダーゼ遊離亢進が認められ、 ARBではプラセボと比較してこれらの反応を抑制したが、 ACE阻害薬では抑制は完全ではなかった。この結果は遊離脂肪酸による白血球活性化にレニンーアンジオテシン系が関与していること、またこの系が白血球活性化に対する薬効評価系の一つになる得ることを示唆した。
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