研究概要 |
これまでに50名の患者がエントリーした.1日あたりの投与量の中央値は20mgであり,投与量の範囲は1mgから384mgであった。患者の中には,モルヒネの投与量を1mg/day(持続投与)まで下げてようやく嘔気などの薬物有害反応が発現しなくなった患者,384mg/dayのモルヒネの持続皮下注によりようやく疼痛のコントロールが可能であった患者が存在した. モルヒネの投与量が1mg/dayの患者における,モルヒネ3位グルクロン酸抱合体およびモルヒネ6位グルクロン酸抱合体の血中濃度はそれぞれ21.2nMおよび26.9nMであった.当患者においてはμオピオイド受容体,UG72β7,ABCB1およびCOMT遺伝子に特徴的な変異は認められなかった. 384mg/dayのモルヒネを持続皮下注した患者においてはUGT2B7遺伝子のrs12233719(A71S)をホモ接合体に有していた.当患者のモルヒネ3位グルクロン酸抱合体/モルヒネは1.80,モルヒネ6位グルクロン酸抱合体/モルヒネは2.41であった.モルヒネを持続静注または持続皮下注した3名の患者におけるモルヒネ3位グルクロン酸抱合体/モルヒネは,1.27±0.5(平均±標準偏差),モルヒネ6位グルクロン酸抱合体/モルヒネは1.32±0.32であり,本多型がモルヒネのグルクロン酸抱合の亢進に関与する可能性が示唆された.当患者においてはμオピオイド受容体,ABCB1およびCOMT遺伝子に特徴的な変異は認められなかった.これまでの薬物動態解析と遺伝子解析においては,モルヒネの薬剤応答性や動態の決め手となる遺伝子多型は同定できていない.現在,モルヒネに対して特異な応答を示した患者,また投与量が特異である患者を中心に,フルサンプリングの薬物動態を解析し,関連遺伝子の多型を調べ,臨床効果との関連を評価している.
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