研究概要 |
目的:モルヒネの投与により誘発される薬物有害反応に対する遺伝子多型の影響について調べた. 方法:経口モルヒネ製剤(MSコンチン)による疼痛緩和を受けた32名のがん患者について,モルヒネによる有害反応とモルヒネの代謝や輸送に関連するUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)2B7遺伝子(UGT2B7)およびP-糖たんぱく遺伝子(ABCB1),およびモルヒネの薬効に関速するμオピオイド受容体遺伝子(OPMR1)の遺伝子多型との関運を調査した. 結果:モルヒネを投与した患者における疲労のグレードは,ABCB1遺伝子の1236番目の塩基がT/Tである遺伝子型を有する場合,または2677番目と3435番目の塩基のディプロタイプがTT/TTである場合に他の遺伝子型,ディプロタイプを有する場合と比較して有意に低かった(P=0.0050or0.013,Mann-Whitney Uテスト).疲労のグレードはまた,OPRM1遺伝子の118番目の塩基がA/Aである遺伝子型を有する場合に他の遺伝子型を有する場合と比較して有意に低かった(P=0.048).これらの遺伝子変異を組み合わせた場合,遺伝子型数の増加につれて疲労のグレードは低下した.吐き気のグレードはABCB1遺伝子の2677または3435番目の塩基の遺伝子型がGまたはCの場合に他の場合と比較して有意に高かった(P=0.027andO.O1).吐き気のグレードはまた,UGT2B7*2を持たない場合他の場合と比較して有意に高かった(P=0.03).これらの遺伝子変異を組み合わせた場合,これらの遺伝子型の数が増加するほど吐き気のグレードは高かった. 結語:我々の検討結果は,薬理遺伝学的なアプローチによりモルヒネの投与によって誘発される有害反応のリスクを予測しうることを示す.
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