研究概要 |
ギテルマン症候群の原因遺伝子であるSolute Carrier Family 12 member 3(SLC12A3)は、NaCl代謝を介した血圧調節において重要な役割を担っている。また、SLC12A3は糖尿病腎症の発症と進展に関与する分子として着目されている。本研究では、糖尿病性腎症の発症と進展にSLC12A3の機能変化によるNaCl代謝異常が関与する可能性について検討した。今年度は、糖尿病腎症とSLC12A3遺伝子のプロモーター領域多型との関連性について検討した。対象は、地域住民833例のうち糖尿病判定を受けた49例の中から、腎症を発症した3例(腎症群)と腎症を未発症の3例(対照群)について検討した。SLC12A3遺伝子のプロモーター領域多型解析は、EDTA加血液より抽出したゲノムDNAを試料とし、PCRダイレクトシーケンス法で行った。SLC12A3遺伝子のプロモーター領域に5種類の多型(-2418G/A,-1991C/A,-605C/T,-142C/Tおよび-141G/C)を検出した。-2418G/A多型では、対照群ではAA型が検出されなかったのに対し、腎症群ではAA型が2例検出された。-142C/T多型では、対照群では3例すべてCT型であったのに対し、腎症群では3例すべてTT型であった。-141G/C多型では、対照群では3例すべてGC型であったのに対し、腎症群ではすべてGG型であった。-1991C/A多型および-605C/T多型では、腎症群と対照群で遺伝子型頻度に差異を認めなかった。糖尿病において、SLC12A3-2418G/A多型および-142C/T多型は腎症の感受性遺伝子多型、-141G/Cは、腎症の抵抗性遺伝子多型となる可能性が示唆された。次年度は、腎症で差異の認められた3種類の遺伝子多型についてケース・コントロール研究を行う予定である。
|