研究概要 |
1995年から2006年の間に中皮腫として胸膜肺全摘除術を行い病理学的検討を行った16例のうち,リンパ節転移や浸潤の程度は問わず,腫瘍の厚さが5mm以下のものを早期の中皮腫とし,その他の症例は進行した中皮腫とすると,8例が早期の中皮腫であった。早期の中皮腫において,病変は主に壁側胸膜に見られるが,病変は臓側胸膜にも存在した。組織型は6例が高分化の上皮型で,1例が主に上皮性成分よりなる二相型,1例が主に肉腫様成分よりなる二相型であった。組織学的に,上皮型は胸膜に異型性を示す中皮の単層性増殖や乳頭状増殖を示した。二相型のうち肉腫様成分は,紡錐形細胞が膨張性に増殖し,小さな結節を多数形成していた。上皮型,肉腫型のいずれも中皮腫の早期の病変は不連続的で,多発性であった。胸膜肺全摘術を行った早期の中皮腫症例の1年,2年,3年生存率はそれぞれ100%,67%,44%,であり,胸膜肺全摘術を行った進行した中皮腫症例の1年,2年,3年生存率57%,14%,0%よりも良好であった。早期の病変は,epithelialmembraneantigenが陽性であり,反応性中皮は陰性であり,生検標本における中皮腫の診断の補助的手段として有用である。一方,中皮腫の診断に有用と報告されているGLUT-1は,早期の中皮腫では発現しておらず,早期例の診断には有用ではない。早期の中皮腫の病態が判明したことにより,早期に中皮腫が診断され,治療がおこなわれる可能性がある。 検討した症例のうち2例は,凍結標本を保存しており,蛋白を抽出し,2次元電気泳動を行った。また,腫瘍組織と正常組織から抽出したタンパク質をそれぞれ蛍光色素Cy5,蛍光色素Cy3でラベルし,2次元電気泳動(2-DDIGE)を行った。ゲルをスキャナーで読み込み,画像解析ソフトDeCyderで解析中である。
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