研究概要 |
粥状硬化層のマクロファージからコレステロールを効率よく引き抜き、肝臓に転送して胆汁中に排泄する、いわゆるreverse cholesterol transportにはHDLの主要アポ蛋白であるapoA-I(分子量:約28,000)が関与している。しかし、肥満細胞から放出されたキマーゼによって一部のapoA-IのC末端(18アミノ酸残基)はtruncateされ、その結果apoA-Iはコレステロールを引き抜く能力を失うと考えられる。すなわち、このtruncated apoA-I(分子量:約26,000)を測定することによって粥状硬化の病態を評価することを目的とした。 私たちは、健常者血漿中にtruncated apoA-Iが存在することを、イムノブロッティング法を用いて証明した。次に、HDLあるいはapoA-Iをキマーゼ処理することによって分子量約26,000のtruncated apoA-Iと思われるバンドと分子量約24,000のN末端がtruncateされたと思われるバンドが増加することを確認した。また、キマーゼ処理を長時間実施すると、正常apoAIおよびtruncated apoA-Iの両方とも消失し、分子量約24,000のバンドだけが認められた。 一方、truncated apoA-IのC末端の10アミノ酸と同じ配列の合成ペプチドを用いてモノクローナル抗体の作成を試みた。その結果、分子量約26,000のtruncated apoAIと反応し、正常apoAIとは反応しない抗体が得られた。しかし、この抗体は分子量約24,000のバンドとも反応した。 今後、得られた抗体の特性評価、ELISA法によるtruncated apoA-I測定法の構築を進め、粥状硬化のバイオマーカーとしての有用性を明らかにする。
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