研究概要 |
2年目の研究は健常ヒト滑膜培養細胞(ACBI479;DSファーマバイオメディカル社)をシトルリン化フィブリノゲン(C-Fbg)存在下で培養し、培養上清中の各種サイトカイン・接着因子および凝固・線溶系制御因子の発現分泌刺激の有無の検討であった。間質細胞で産生されるとされている炎症性サイトカインであるTNFα,IL-6,IL-8のいずれもC-Fbgの単独添加、あるいはC-Fbgと結合すると考えられる抗環状化シトルリンペプチド(CCP)抗体の同時添加においても、両者無添加の培養上清と比較して、有意な増加は認められなかった。TNFαにおいては、むしろどちらかの添加により低下する傾向が認められた。炎症性サイトカインにより細胞表面に発現が増強すると考えられている接着因子であるICAM-1とよく相関する可溶性ICAM-1(sICAM-1)は、C-Fbgの単独添加、あるいは抗CCP抗体の同時添加においても、両者無添加の培養上清と比較して、有意な増加は認められなかった。線溶低下を来たし組織内フィブリン沈着に関与すると考えられているプラスミノゲンアクチベータインヒビター(PAI-1)と、関節リウマチの関節組織破壊に関与すると考えられているマトリックスメタロプロテアーゼ-3(MMP-3)の発現は、C-Fbg単独添加、抗CCP抗体単独添加、あるいはC-Fbgと抗CCP抗体の同時添加による明らかな増加は認められなかった。以上、今回の検討では、C-Fbgあるいは抗CCP抗体の正常滑膜細胞への明らかな影響は観察されなかった。このことは、今後健常者滑膜細胞と関節リウマチ患者単球・リンパ球、患者滑膜細胞と患者単球・リンパ球、患者滑膜細胞と健常者単球・リンパ球の組み合わせ培養に対して、C-Fbgあるいは抗CCP抗体の影響を調べる実験を行う重要性を認識させられた。
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