本研究の発端となった、FT4の検査値異常を指摘された期間を含む2005年1月から2006年12月までのデータを対象として、高値検体の影響を受け難い代表値としての中央値に注目し、患者検体の全てのデータを用いた場合、基準範囲で抽出した患者データを用いた場合、外れ値を除いた患者データを用いた場合について、週毎に中央値と平均値を算出し、同様に算出した管理検体のデータと比較検討した。 検査値異常を指摘された時期には、日毎の管理検体の平均値を用いた精度管理法では異常を検出できなかったが、週毎の管理検体の平均値を用いた場合には同じ時期にシフトが認められた。患者検体を用いた精度管理法でも、患者の全データを用いた場合の中央値と、外れ値を除いた患者データを用いた場合の中央値と平均値において、同じ時期にシフトを検知した。しかし、基準範囲で抽出した患者データを用いた場合の中央値と平均値ではシフトの期間が短かった。従って、少なくともFT4の精度管理を管理検体で行う場合には、日毎の平均値と共に週毎の平均値も用いて精度管理を行うことが望ましい。また、FT4の精度管理では、管理検体の平均値を用いた場合と同様に、患者検体の全データの中央値や、外れ値を除いた患者データの中央値や平均値を用いても可能であった。 この他、本研究の主題である、検査室や検体管理部門で使いやすい患者検体結果を用いた検体検査の精度管理法の開発の為に、研究用サーバ/クライアントPCを購入し、個人を同定できる情報を削除した研究用の検査データをセットアップした。
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