研究概要 |
本研究は,"ナノ抗体",すなわち,シングルドメイン抗体(single-domain antibody;sdAb)を新しい分子認識単位として導入してハプテンの高感度モニタリングシステムの構築を目指すものである.SdAbとは,ラクダ科動物由来の特殊な抗体の可変部ドメインあるいはそれを模倣した変異体(Mr約12,500)で,最小の抗体由来分子認識単位として有用と期待される.我々は先に,マウス抗エストラジオール(E_2)抗体のV_H遺伝子をerror-prone PCRで増幅後,ファージディスプレイを行い,変異sdAbライブラリーを構築している.本年度は,リンカー部分にジスルフィド(SS)結合を含む"cleavableビオチン"標識E_2(CB-E_2)を用いて実用的な親和力を示す抗E_2変異sdAbの単離を試みた. CB-E_2は,6-oxo-E_2 6(O-carboxymethyl)oximeを出発物質として4工程で合成した. Neutravidinを固定化した試験管にCB-E_2を反応させたのち,変異sdAbライブラリーを加えて4℃τで1夜インキュベートした.十分に洗浄したのち,50mMジチオスレイトールを働かせてCB-E_2のSS結合を切断し,E_2結合活性を保持しているファージを回収した.これらをクローン化して,E_2-ウシ血清アルブミン結合体に対する結合活性をELISAにより調べたところ,野生型V_Hを提示するファージクローンより高いシグナルを示す数種のクローンを見出した.これらのうち2種クローンについてsdAbのアミノ酸配列を決定したところ,全長124残基のうち,それぞれ11カ所,8カ所に変異がみられた.現在,上記sdAbを可溶型タンパク質として調製し,その結合特性を詳細に検討している.
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