研究概要 |
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、HSV-1とHSV-2の二種類が存在する。我々はこれまでLAMP法を用いたHSV型特異的な迅速診断法を開発したが、標的核酸の定量的評価化という観点ではいまだ課題が多かった。そこでこれまで開発したHSV型特異的LAMP法と、近年開発されたグアニン消光現象を利用したQprobe法を組み合わせたHSV DNA迅速定量法開発を目指した。HSV-1、HSV-2に特異的な遺伝子配列部位に各primerを設定、標的領域をサブクローニング後、抽出したプラスミドのコピー数を決定し段階希釈してキャリブレーション系列とした。各定量的LAMP法のmixtureとして、12.5μlのLoopamp増幅試薬キット(栄研化学)にHSV-1またはHSV-2特異的primer mix(FIP,BIP,LPB,LPF,F3,B3)を2.0μl、さらに1μlのQprobe(4pmol)、8U Bst polymeraseを加え全体量20μlとした。テンプレートを5μl加えた後、63℃・30分間StepOne(ABI)を用いて連続的に蛍光強度変化を測定した。各定量的LAMP法の基礎的検討として日差再現性と同時再現性を評価した。さらに、ヘルペス脳炎を疑われた髄液から抽出したDNA 16検体を用い、従来のreal-time PCR法と定量的LAMP法について比較検討した。HSV-1特異的、HSV-2特異的定量的LAMP法の感度は、両者とも100コピー/反応であった。日差再現性について検討した結果、HSV-1特異的定量的LAMP法でr^2=0.99、SDは0.4-0.7、HSV-2特異的定量的LAMP法ではr^2=0.97、SDは0.3-0.8であった。同時再現性の検討では、HSV-1特異的定量的LAMP法でr^2=0.99、CVは0.8-5.8%であった。また、HSV-2特異的定量的LAMP法でr^2=0.99、CVは0.4-7.4%であった。臨床検体の検討ではHSV-1陽性検体のみであったため、HSV-1特異的real-time PCR法と定量的LAMP法の比較のみ可能であったが、r^2は0.82であった。今回開発した定量的LAMP法は、日差再現性、同時再現性ともに良好で信頼性の高いウイルスDNA定量的評価法と考えられる。本法はLAMP法の迅速性を保ちつつ(HSV-1が15分、HSV-2が20分)、ウイルスDNA量の測定が可能で臨床的有用性は高いと思われる。臨床検体検討でもreal-time PCR法と定量的HSV-1 LAMP法に良好な相関がみられたが、2検体のみ両者の結果が一致しなかった。
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