1.抗菌薬関連下痢症・腸炎症例から採取された糞便検体における検討の総括 (1)160糞便検体より、87菌株のクロストリジウム・ディフィシルを分離し、slpA sequence typingにより解析した。 (2)slpA sequence typingは、PCR ribotypingと同等の解析力を示し、加えて、再現性および解析結果の比較の容易性において非常に優れていることがわかった。 (3)糞便検体から直接slpA sequence typingによるタイピングを行ったところ、培養陽性であった検体では、ダイレクト・タイピングの結果と分離菌株におけるタイピング結果がすべて一致し、slpA sequence typingはダイレクト・タイピング法として有用であった。 (4)分離菌株によるタイピング結果およびダイレクト・タイピングによるタイピング結果が、slpA sequence typesmzであった糞便検体が62%を占め、本タイプが日本の医療施設では優勢であることがわかった。 (5)160検体中1検体でPCR ribotype 027株が分離され、ダイレクト・タイピングによっても、PCR ribotype 027に特異的なslpA遺伝子(slpAgc8)が認められた。検討した日本の医療施設においては、北米流行高病原性027株が優勢であるというエビデンスは得られなかった。 2.Loop-mediated isothermal amplification(LAMP)によるPCR ribotype 027の同定 (1)PCR ribotype 027とタイプされた菌株が得られた1症例で、糞便検体から直接抽出したDNAおよび糞便検体を一晩増菌培養した培地から抽出したDNAにおいて、LAMP法によってslpAgc8が検出された。 (2)LAMP法によるslpAgc8の検出は、北米流行高病原性027株の迅速かつ簡便な同定法として有用と考えられた。
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