研究概要 |
グラム陰性桿菌におけるβ-ラクタマーゼは、現在数百種類をこえる報告がある。このうち、臨床的に問題となっているβ-ラクタマーゼは、伝達性プラスミドに遺伝子がコードされているタイプで、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)やメタロ-β-ラクタマーゼがある。メタロ-β-ラクタマーゼ遺伝子の我が国における保有状況は、すでに報告した(N.Shibarta, et al.,JCM41(12),in press,2003)。また、ESBL産生菌に関しては、我が国のCTX-M型β-ラクタマーゼの遺伝子型別と分布状況を報告した(Antimicrob.Agents and Chemotherapy,50(2),2006)。 これらの報告で、我が国では、大腸菌やKlebsiella spp.以外の臨床分離株に広く、耐性菌が広がっていることが示唆された。 しかし、我が国の医療機関で行われているこれらの薬剤耐性菌のスクリニングは、Clinical laboratory Standards Institute(CLSI)の推奨する基準に基づいており、大腸菌やKlebsiella spp.を主なターゲットにものであるのが現状である。本研究では、他の菌種におけるこうしたβ-ラクタマーゼ産生菌の鑑別を目的としている。また、こうした鑑別法、型別を行うことにより、新しいタイプのメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌の検出にもつながると考えられる。さらに、院内感染対策における疫学調査を行う上でも、大きく寄与すると考えられる。本研究では、クラスAβ-ラクタマーゼに属する基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBLs)産生菌を鑑別するCLSIのディスク拡散法を改良し、SMAディスク法と組み合わせ、産生菌の鑑別を試みた、さらにその遺伝子型別も行い、比較検討した。その結果、この方法は、ESBLs産生菌やメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌、クラスC型産生菌を区別することができた。それだけでなく、複数β-ラクタマーゼを産生する菌株も検出することが可能であることが示唆された
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