癌特異的糖鎖は種々の癌において主要な癌マーカーであることが知られている。多くの糖鎖癌マーカーはコア1型O-結合型糖鎖であり、その中でもTn抗原やsTn抗原の様にコア構造で伸長の止まった糖鎖抗原はコア1型糖鎖合成に問題があると考えられる。コア1型糖鎖はコア1合成酵素(Core1GalT1)により合成されるが、コア1合成酵素の機能はCosmcというコア1合成酵素特異的シャペロンの発現に依存することがわかっている。Cosmc遺伝子はX染色体上に座位し、Tn syndrome患者血液細胞で遺伝子異常が発見されるなど、上記糖鎖癌抗原発現との関係が期待される。そこで本研究では癌細胞におけるコア1型癌糖鎖抗原発現について調べる目的で、コア1合成に関わる蛋白質、特にCosmcに対するプローブ作製を行った。ヒトCosmcのリコンビナント蛋白質を抗原としてマウスに免疫し、定法により用いてモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製し、46エライザ陽性クローンの中からWesternにより18クローンの陽性クローンを得た。これら陽性クローン中より3クローンを用いて免疫染色で解析した結果、2クローンは免疫染色可能であることが明らかになった。開発した抗体を用いて種々の培養細胞を免疫染色すると、Cosmcを過剰発現した細胞では細胞質が、正常レベルのCosmcを発現している細胞では核近傍細胞内膜系が染色されるのに対し、正常なCosmcを発現していない細胞は染色されなかった。これらの結果より、免疫染色可能な抗Cosmc抗体を開発したと考えており、癌組織標本の染色やコア1合成酵素の機能解析に役立つことが期待される。
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