高度下水処理水貯水槽内において大量発生するユスリカ類の防除法確立のために、各種「電気刺激」、3波長の「超音波」を利用したユスリカ類の卵塊への影響を検討した。まず卵塊中に含まれる卵数を測定し、卵塊を複数の塊に分割して実験に供した。卵塊のステージをそろえることは安定した結果を得るために大変重要であった。行った実験結果は以下の通り、(1)超音波の強度と卵塊からの幼虫の孵化率に注目:「超音波刺激」でも「電気刺激」でも、「波長の違い」や「与える刺激時間の長さの違い」のどの組み合わせにおいても、卵塊からの幼虫孵化率は90%を超え、防除効果がほとんど認められなかった。このことより、卵塊の場合、時間をおいて孵化させてから若齢幼虫を防除対策とするか、卵塊そのものを魚類に捕食させるのか、の何れかの方法が有効ではないかと推測された。(2)応用のための予備実験として、中規模水槽を作成した。循環式の水槽の作成には、大変苦労をした。水槽内のユスリカ類幼虫の生息分布を確認したところ、ランダム、分散型の分布ではなく、集中分布であることが明らかとなった。水中において各種物理刺激を与えた場合に、効果的に防除を行うには、幼虫の分布のパターンを知っておくことが重要である。(3)魚類を利用した生物防除技術の確立:魚種としてはグッピー、カダヤシの両種を採用し、捕食効果を比較検討した。両種とも、個体数を長期間維持するためには定期的に一定量の個体の供給が必要であり、処理水槽内での自己繁殖はあまり期待できない。幼虫、蛹に対する捕食効果は大きく、特に蛹についての捕食効果は期待できると推測された。次年度は、この点について、さらなる観察とデータの蓄積が必要である。また、流水環境下での各種物理刺激の効果についても、これまでの結果の再現性の検証が必要である。
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