高度下水処理水貯槽内において大量発生するユスリカ類の防除法確立のために、最終年度にあたる本年度は、H19年度、20年度の成果をふまえ、中規模の実験槽に実験規模を拡大し、実用化に向けての様々な知見を集約することを目的として実験を行った。具体的には、(1)中規模実験水槽内におけるユスリカ類に対する超音波、電気刺激の強さとその効果、(2)中規模水槽における魚類による補食効果の再検討、(3)中規模実験槽内における水の動きと超音波刺激の効果(止水環境で得られた成果の再現性の確認)、などについて調査を行った。(1)の成果として、幼虫類の分布は環境条件により左右され、暗黒条件下では、ほぼ均一分布、明条件下では集中分布となり、負の走行性を示した。光条件により分布が左右されることが示唆され、光のあたらないシェルターを利用すると、そこへ集中的に集まることも明らかとなった。(2)の成果として「卵塊の状態から時間をおいて孵化させた後、若齢幼虫(1-2例幼虫:プランクトン生活)をターゲットとして魚類に補食させる」方法、ならびに、「卵塊そのものを魚類に補食させる」方法のいずれも魚類を用いて実験したところ、若齢幼虫の方がほぼ100%補食されるのに対して、卵塊では食べ残しが出てくることが明らかとなり、防除効果からすると若齢幼虫ステージの方が効果的であることが示唆された。(3)の成果として、ユスリカ類が正常に生息する程度の流水条件下であれば、止水条件とほぼ同じ効果が得られることが確認された。 最終年度にあたり、国内外の学会において、本研究の成果を積極的に発表するとともに、論文化できるようにこれまでの研究成果で不十分な部分の補足データをあつめ、中規模水槽を用いてその再現性の確認を行った。研究成果は下記に示すように論文1件(有審査)、学会発表4件(内1件は国際シンポジュウム)、図書1件と成果が上がった。
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