研究概要 |
家族性AVMは例数が少数の上、小家系が多く、通常のpositional cloningの方法による遺伝子同定が困難なため、昨年度までに家系内の連鎖解析に加えて、同地域のAVM孤発例についてmapping arrayを用いてSNPの症例対照比較による相関解析を行った。しかし両解析で共通の遺伝子座領域はほとんどなかった。さらに一人発症一人未発症の一卵性双生児二組で、SNPsにおける差異やmicrodeletionの有無について検証したが、いずれも認められなかった。疾病予防のための脳血管奇形の遺伝子解析として今年はAVMと同様に痙攣や脳出血の危険性のある海綿状血管腫(脳静脈奇形、CCM)と診断された1家系(母親、第一子、第二子)の遺伝子解析を行った。CCMにはCCM1, CCM2, CCM3の3種類の遺伝子座に連鎖する型が報告されているため、各遺伝子座(7q21-q22、7p13、3q26.1)で連鎖解析を行った。連鎖解析の結果、CCM2は否定されCCM1またはCCM3の可能性が残った。CCM1の責任遺伝子KRIT1はCCMの原因の多くを占めているとされる。そこで可能性の高いKRIT1について全coding regionと周辺のシークエンシングによる変異検索を行った。その結果エクソン16に1塩基(A)の挿入変異を検出し、これによってチロシン(TAT)がストップコドン(TAA)に変化して、タンパクはここで終止することが明らかになった(Y635X)。変異は患者3人に共通していた。変異の位置は主要ドメインにあり、KRIT1と他のタンパクとの作用に重要であると考えられるため、変異によるloss of functionが疾患の原因と示唆された。KRIT1タンパクの機能は未解明だが、細胞接着や細胞移動に役割を持ち、血管形成に関与していると推測されるため、脳AVMとの関係を今後追及したい。
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