本年度は、手指にレイノー現象の症状を有する振動工具取扱い者を対象に、レーザー血流画像化装置による末梢循環モニタリング検査を実施し、前年度の検討において新しく作成された評価基準を適用して検査結果の判定を行うとともに、自覚症状や臨床所見から判定される循環障害の症度との関連を検討した。対象者は、現在、振動工具を使用する作業に従事している林業および製造業の労働者、あるいは過去に振動工具を使用していた振動障害の認定患者で、いずれも手指にレイノー現象を認める男性であった。これらレイノー群の皮膚血流は、冷水浸漬試験中の負荷前、負荷中、負荷後のいずれの段階においても著しく低値を示し、特に、負荷後の回復が大きく遅延する傾向にあった。また、各段階における皮膚血流と、負荷後の回復の程度を示す回復比について、振動に曝露されていない集団から求めた基準値(カットオフ値)との比較を行うと、レイノー群では示指、中指、環指のいずれにおいても基準値を下回って異常と判定される者が多く、その異常数はストックホルムワークショップスケールを用いて評価したレイノー現象の症度が高くなるにつれて増加する傾向にあった。さらに、異常数の合計によって所見レベルを4段階(クラス0〜クラス3)にクラス分類すると、レイノー群では「クラス0」の者はほとんどなく、「クラス2」または「クラス3」に大部分が区分された。また、所見レベルがクラス1以上の場合を「所見あり」と定義した場合、レイノー群では約8割の者が「所見あり」と判定された。このように、検査結果に基づく所見レベルはレイノー現象の有症者における手指の症状の程度を反映しており、本検査法の有効性ならびに評価基準の妥当性が確認された。
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