研究概要 |
2009年度は6月26日~9月28日の期間,10日間毎にと畜場に搬入された大分県内で飼育されたブタの血液200検体(20検体/回)を採取した.血清を分離した後,Vero細胞に接種し,2株の日本脳炎ウイルスを分離した.この2株のウイルスの遺伝子RNAを精製し,エンベロープ遺伝子全体の塩基配列を決定した.これまでに1980年~2009年の30年間に大分で分離された日本脳炎ウイルス30株のエンベロープ遺伝子の塩基配列を決定した.この塩基配列の情報と既にジーンバンクに登録されている日本及び東南アジアで分離された代表的な日本脳炎ウイルス30株の塩基配列,アウトグループとしてマレーバレー脳炎ウイルスの塩基配列を加え分子系統樹を作成した.その結果,大分株は1980~1989年の株は全て遺伝子型GIII型に属し,1995~2009年の株は全て遺伝子型GI型に属した.1989年以前の流行株(GIII型)は更に3つのグループ(#1~3),1995年以降の流行株(遺伝子型GI)は更に4つのグループ(#4~7)に分類できた.2009年分離株のうち1株は,2005~2009年の分離株と同じグループ(#7)に属することが明らかとなった.この#7グループのウイルス(7株)は他のGI大分株には見られない部位(12ケ所)に共通の塩基置換が認められ,同一系統のウイルスであることが判明した.このことは#7グループのウイルスは2005年以降大分地域に土着して毎年流行していることを示唆している.更にこの#7グループには2005年に中国の上海で分離された株が属することが系統樹解析から判明した.#7グループの大分株は2005年の上海株と共通の祖先を持つことが推測された.即ち,この共通の祖先ウイルスが上海と大分地域に伝播してきた,あるいは2005年頃,上海地域から大分地域に伝播してきたことが推測された.
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