日本における近年の出生数減少に伴う将来にわたる持続的な労働力低下への懸念から、女性の就労に対する社会的要請はますます大きくなると思われる。現在、女性の就労状況は、未婚者の就業率は高いが結婚、妊娠とともに減少し、中高年になって増加するM字カーブとなり改善されていない。今、ワーク・ライフ・バランスを考えた、健康で働き続けることが可能な就労形態や環境を整えることが重要である。女性就労者における労働環境としての就労状況、職場ストレス、また、家庭での生活習慣を含めて、疲労を知る1つの要因としての睡眠の質と生殖障害について、女性のライフステージにおける夜間、不規則勤務、交代性勤務等による精神面におけるストレス状況と包括的睡眠レベルが障害されることによる生理不順や月経障害等の生殖機能への影響について調査を行う。 (1)生活習慣、保健医療習慣、リプロダクティブ・ヘルス、子育て期における睡眠の質の悪化について、自覚的職業疲労評価、包括的睡眠評価と身体的機能評価との関連について評価を行う。睡眠はホルモンの影響をうけやすいため、男性よりも女性において排卵周期により影響の出やすい時期と受けない時期とに分かれることも考えられる。就労前後における唾液、尿サンプリングによって内分泌系への影響を明らかにする。妊娠にともなう睡眠パターンの変化などは容易に出現しやすいことから、勤務形態の差による睡眠障害と内分泌系への変化との関連性が生殖障害をもたらす可能性について調査研究を行うことは女性の勤務状況を考えるうえで重要であると思われる。 (2)人においては条件設定の難しい夜間活動などを評価するために、動物実験において睡眠障害の影響における雌雄の性差を確認する。現在では、勤務形態は男性と同様に考えられることが多いことから、動物実験によって、睡眠~覚醒ごとのプロラクチン、LH、エストロゲン、コルチゾールの分泌が睡眠障害によってどのように性差変化を行うか明らかにする。夜間勤務による活性酸素の増減、長時間労働にともなう細胞ゲルアッセイによるDNA障害への有無を実験によって測定する。早い時期に睡眠パターンの馴化、規則化をはかり回復の指標として活性酸素量の変化を使用することができるかを明らかにする。
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