食品成分の併用による発癌予防効果の増強を検討する為に、まずそれらの併用研究に供する要素成分の探索として、食品成分や天然成分の単独での癌細胞増殖抑制効果を探索・検討した。 その結果として、疫学研究及び動物実験研究では、発癌予防効果が知られているAllium野菜(ニンニク、タマネギ)に注目し、それらに含まれる有機硫黄化合物の一種であるdiallyl trisulfide (DATS)に、細胞周期をM期で停止させることによる癌細胞増殖抑制効果があることを見いだした。また、この効果は、DATSにより細胞内で産生されるreactive oxygen species (ROS)産生に依存しており、従来のM期停止を誘導する抗癌剤のような微小管の重合・脱重合への作用とは異なることを確認した。更に、このROS産生依存的なM期停止は、正常細胞で認められず、癌細胞あるいはtransformされた細胞でのみ生じることも確認した。 食品成分や天然成分の単独での癌細胞増殖抑制効果をスクリーニング的に評価し、癌細胞増殖抑制効果を示す有効成分を選択した。次に、それらの有効成分が単独では充分な増殖抑制を示さない濃度(IC50)を設定し、同じく癌細胞増殖抑制効果を示す成分であり、多様な遺伝子発現に変化を及ぼすヒストン脱アセチル化酵素阻害作用を有する酪酸と組み合わせることで、その併用効果を評価した。約30種類の各有効成分と酪酸との併用をそれぞれ評価したが、充分な増殖抑制効果を示す相加・相乗効果は見出せなかった。
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