カビはアトピー性皮膚炎の発症原因のひとつと考えられているが、これまで実験的に、カビ抗原が誘発するアトピー性皮膚炎モデルは確立されていない。本研究では、カビは発症を誘発する物質ではなく、アトピー性皮膚炎をさらに増悪する作用を有するものと考え、アトピー性皮膚炎モデルマウスの症状や病態に、カビがどのような影響を及ぼすか調べることを目的とした。H19年度は、室内に浮遊する真菌を吸入した場合(経気道的曝露)を想定して、動物実験を行った。実験には、主たる室内浮遊真菌であるススカビ(アルテルナリア)とカンジダを用いた。NC/Ngaマウスに、週に1回、計5回、ススカビまたはカンジダの抽出物0.5μgを気管内に投与した。3回目の投与からアトピー性皮膚炎を誘発する処理を並行して行った。すなわち、ダニ抗原5μgを耳介に2日毎に8回、皮下注射した。ダニ抗原のみを皮下注射したアトピー性皮膚炎誘発群と、ススカビ、カンジダの気管内投与を併用したアトピー性皮膚炎誘発群の症状を比較した結果、ススカビを気管内投与したアトピー性皮膚炎群において、統計的な有意差は認められないものの、アトピー性皮膚炎誘発群よりも皮膚症状の増悪がみられた。一方、カンジダ気管内投与を併用した群では増悪作用はみられなかった。アトピー性皮膚炎誘発処理を行わず、ススカビ、カンジダの気管内投与のみを行った群では、アトピー性皮膚炎様症状はみられなかった。これらのことから、ススカビがダニ抗原誘発性アトピー性皮膚炎を増悪する可能性が考えられる。現在、血清中総IgE値、病理、組織中サイトカイン産生に関して解析中である。
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