透析患者では血清中微量元素の濃度が健常人と比べて異常であることが知られているが、多数例で健常人と比較した報告はほとんど見られない。本研究では、血清中微量元素濃度について、透析患者と健常者で年齢調整して比較検討した。また、骨密度測定も実施した。 血清中微量元素濃度を測定した40歳から79歳の透析患者756名(61.9±9.8歳)、男性462名(62.1±9.7歳)、女性294名(61.6±10.0歳)を解析対象とした。健常者は一般住民から性別年齢階級別に無作為抽出した185名(59.8±10.7歳)、男性94名(60.1±11.0歳)、女性91名(59.3±10.6歳)を解析対象とした。フッ素以外の血清中微量元素濃度はICP-MSで、血清中フッ素濃度はフッ素イオン電極を検出器とするフローインジェクション分析装置で測定した。患者群と健常者群について平均値と標準偏差を計算した。両群における年齢調整元素濃度の比較は共分散分析を用いて、60歳を基準として検討した。 透析患者で健常者群よりも男女共に低い元素はZn、Cu、Seで、高い元素はMo、Mn、Co、Sr、As、Fであった。男性のRbが患者群で低く、Cdが高かった。男女差が認められた元素は、患者群でBとSr、健常者群でBとRbであった。 透析患者の骨密度(BMD)は、88名(65.8±13.0歳)、男性69名(64.6±12.8歳)、女性19名(69.8±13.0歳)について測定した。DEXA法(ALOKA社製ダイクロマススキャン、DCS-600EX-III)を用いて前腕部(橈骨)のBMDを測定した。結果は男性:0.66±0.10mg/m^3、女性:0.41±0.12mglm^3であった。また、それぞれの当該年齢の通常値を基準とした値(%)は、男性:92.3±13.3、女性:90.3±14.5と男女ともに低いレベルにあった。
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