研究課題
【目的】本年度では、アポトーシスの視点から動物実験を行いin vivoにおいて有機リン農薬による脾臓リンパ球構成への影響および有機リン農薬による脾臓細胞のアポトーシスを検討した。【材料と方法】1.有機リン農薬:Fenitrothion(FNT)を用いた。またFNTによる免疫毒性の機序を解明するために、FNTの代謝物3-methyl-4-nitrophenol(MNP)も用いた。2.動物:Wistar雄ラット(10週齢)を、対照群、FNT低投与群(5mg/kg)、FNT高投与群(10mg/kg)、MNP低投与群(5mg/kg)及びMNP高投与群(10mg/kg)に分ける。なお、FNT10mg/kgの投与により代謝生成されるMNPのモル数は、MNP5mg/kg投与群にほぼ等しい。3. 試薬の投与:FNTとMNPを2ヶ月経口投与してから(週4-5日)、最終投与の翌日に以下の測定を実施する。4.測定項目1.FNTによる脾臓リンパ球構成への影響:脾細胞を調製し、Flow cytometry法を用いて測定した。2.FNTによる脾臓細胞アポトーシスの検討:光学・電子顕微鏡で形態学的変化を検討した。【結果と考察】1.FNTが量依存的に脾細胞中のCD8陽性T細胞を減少させ、高投与群のCD8陽性T細胞が対照群より有意に減少したことが明らかとなった。一方、CD4とCD3陽性細胞では各群の間に有意差が認められなかった。2.MNPの高投与群ではCD3とCD8陽性T細胞が共に対照群より有意に減少したことが明らかとなった。一方、CD4陽性細胞において各群の間に有意差が認められなかった。3.FNTが量依存的に脾臓重量、体重及び脾臓と体重の比を有意に減少させ、脾臓重量、体重及び脾臓と体重の比においていずれもFNT高投与群が対照群より有意に低いことが明らかとなった。4.FNT及びMNPは、脾細胞中のB細胞、NK細胞及びマクロファージへの影響は認められなかった。5.電子顕微鏡ではFNT投与群の脾臓にアポトーシス細胞が検出された。
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NK Cell Assays in Immunotoxicity Testing, Immunotoxicity Testing Methods in series of Molecular Biology, Methods Mol Biol.,( Dietert RR, eds)(Humana Press, NJ, USA.).
ページ: 207-219
Toxicology 255
ページ: 53-57