酸化ストレスに基づく活性酸素分子種の産生がNOの寿命に影響し、有毒なペルオキシナイトライト由来のラジカル発生をもたらすことで、動脈硬化の病態に関与することが予想される。細胞外型スーパーオキシドジスムターゼ(extracellular superoxide dismutase; EC-SOD)は唯一の分泌型SODアイソザイムである。ヒト及びマウスのEC-SODはヘテロテトラマーで、主に肺、腎臓、血管平滑筋、結合組織、脂肪組織に分布し、C末端近傍のヘパリン結合部位の働きによりプロテオグリカンなどに親和性を示し、分泌後に体液中よりもむしろ組織中に多量に分布することで細胞表面の抗酸化作用を担う。血管壁の主要なSOD活性をEC-SODが占めることから、EC-SODの分布や機能と高血圧・動脈硬化性疾患との係わりが注目されている。3T3-L1脂肪前駆細胞およびラット血管平滑筋細胞(RASMC)にリコンビナントマウスEC-SODを添加し、細胞による取り込みと細胞内分布に対する酸化ストレス、一酸化窒素曝露の影響を間接蛍光染色法、及びウエスタンブロット法で観察した。RASMC、および3T3-L1細胞はEC-SODと効率よく結合したが、過酸化水素による前処理はEC-SODの取り込みを著しく低下させた。一方、過酸化水素による後処理はEC-SODの取り込みを促進した。さらに、NOドナー負荷による一酸化窒素刺激は3T3-L1細胞のEC-SOD取り込みを顕著に促進した。また、EC-SODの添加は各種刺激に対するRASMCのHB-EGF(ヘパリン親和性上皮増殖因子様増殖因子)発現を抑制することから、EC-SODは血管増殖性の疾患の予防因子として機能していると考えられる。細胞のEC-SOD取り込みに対する一酸化窒素、酸化ストレスによる影響は、プロテオグリカンのラジカルによる修飾がEC-SODの局在に関与する可能性を示唆している。
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