1. アクリルアミド曝露によるPumaの発現誘導 (1) p53依存的転写の阻害剤であるpifithrin-αによる前処理でp53の転写活性を完全に阻害しても、SH-SY5Y細胞におけるアクリルアミドによるPumaの発現誘導を阻害することは、全く出来なかった。従って、Pumaの発現誘導はp53非依存的であった。 (2) Pumaの発現誘導がアクリルアミドによる細胞毒性の発現に必須であるかを、Puma特異的なsiRNAを利用してPumaの発現を低下させて調べた。その結果、Pumaの発現誘導抑制は、全くアクリルアミドの毒性発現に影響を与えなかった。従って、少なくともPuma単独で、アクリルアミドによる細胞毒性を発現している訳ではないと考えられた。 2. ミトコンドリアのp53及び細胞内グルタチオン濃度 (1) ミトコンドリアにおけるp53の発現は、アクリルアミドの用量依存的に増加していた。 (2) アクリルアミドは、細胞内のグルタチオンレベルを著しく低下させていた。そこで、グルタチオン・モノエチルエステルなどの処理により細胞内グルタチオンレベルを増加させると、アクリルアミドによるミトコンドリアのp53発現の増加は抑制された。 (3) 細胞内グルタチオン濃度を増加させると、アクリルアミドによるアポトーシス誘導が阻害され、細胞毒性も軽減された。 (4) しかしながら現在のところ、ミトコンドリアから細胞質中へのチトクロームcの再現性のある明らかな放出は認められていない。
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