研究概要 |
室内空気中化学物質の中でも普遍的に検出されるポリブロモジフェニルエーテル類(PBDEs)及びリン酸エステル類(PEs)の難燃剤について10種類の核内受容体(ERα/β,AR,GR,TRα/β,RXRα,PPARα/γ,PXR)活性とダイオキシン受容体(AhR)活性をレポーター遺伝子アッセイ法により調べた。PBDEs8物質及びその代謝物(水酸化体4物質,メトキシ体4物質)の多くは、ERα/βアゴニスト・アンタゴニスト活性及びARアンタゴニスト活性を示した。また、GRアンタゴニスト活性やTRα/βアンタゴニスト活性を示す物質も認められた。RXRα、PPARα/γ及びAhRに対してはほとんど活性を示さなかったが、これらの化合物の多くに、PXRアゴニスト活性を認めた。PBDEs及び代謝物の化学構造とホルモン受容体活性との間には,いくつかの関連性が認められ、とくにPBDE水酸化体は、PBDEsやPBDEメトキシ体に比べ受容体活性が強く、パラ位水酸基の近傍にあるブロモ基の存在がホルモン受容体との相互作用に大きく影響することが示唆された。PEs11物質のうち、いくつかにERα/βアゴニスト活性を認め、さらにAR及びGRアンタゴニスト活性を認めた。これらの化合物にTRα/β、RXRα、PPARα/γ及びAhR活性は認められなかったが、7物質にPXRアゴニスト活性を認めた。PEsのうち構造的に側鎖の大きい物質は、相対的に疎水性が高く分子サイズが大きいことから核内受容体のリガンドとして機能し易いと考えられた。一方、PXRアゴニスト活性を示したいくつかのPBDEs及びPEsをマウスに投与し、肝臓におけるCYP3A11遺伝子の発現誘導をRT-PCRを用いて検討したところ、PBDEsは誘導能を有していたが、PEsは誘導能が認められなかった。このことから、PEsは生体内で代謝を受けやすく、リガンドとして機能しなかったことが推察された。
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