研究課題
我々は、これまでに車の排気粒子や揮発性有機化合物などに対する健康影響、特に免疫系への影響について研究を行ってきたが、これらの化学的刺激はTh1/Th2バランスをかく乱しアレルギーを悪化させる方向に作用する結果を示している。近年、環境中の有害物に対する小児の脆弱性が注目されるようになってきたが、特に、乳幼児期における免疫系は発達の途上にあり、そこに、微生物感染や化学物質などによる複合的な刺激が加わると成長後の免疫系の発達、特にTh1/Th2バランスに様々な影響を引き起こす可能性が推測される。本研究では、乳幼児期におけるグラム陽性菌性の経気道感染や刺激(特にTLR2のリガンドである菌体細胞壁成分のPGNやリポテイコ酸(LTA)による刺激)が成長後のTh1型応答の発達やアレルギー抑制へと導くかどうかを明らかにするとともに、化学物質過敏症やシックハウスの原因物質の一つでもあるトルエン等による二次的な刺激がTh1/Th2バランスにどのような修飾作用を持つのかをアレルギーモデル動物を用いて解明することを目的とする。本年度は、黄色ブドウ球菌の代わりにペプチドグリカン(PGN)を用いマウス乳仔期でのトルエン吸入曝露(50ppm;6h/日,5日間)とPGN刺激(腹腔内投与)によるマウス成長後の免疫系への影響について検討した。その結果、マウス1週齢時からのトルエン吸入曝露は、3週齢時において総IgG1および総IgG2a抗体の産生レベルを高めた。PGNとの併用はトルエンによって増加した総IgG2aのレベルを低減させた。3週齢時および6週齢時での肺および脾臓ホモジネート上清中のサイトカイン産生レベルは低値であり、トルエンやPGN又は併用による影響はみられなかった。以上の結果から、マウス乳仔期でのトルエン曝露およびPGN刺激との併用はTh1系およびTh2系の血中Ig抗体レベルをかく乱することが示唆された。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
岡山実験動物研究会報誌 26
ページ: 45-49
J.Toxicol.Sci. 34
ページ: 341-348
Inhal.Toxicol. 21
ページ: 793-802
http://www.nies.go.jp/risk/mei/mei003_4.html
http://www.nies.go.jp/risk/members/yamamoto/yamamotoj.html