研究課題/領域番号 |
19590615
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研究機関 | 山梨県環境科学研究所 |
研究代表者 |
瀬子 義幸 山梨県環境科学研究所, 環境健康研究部, 研究管理幹 (60133360)
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研究分担者 |
長谷川 達也 山梨県環境科学研究所, 環境健康研究部, 主任研究員 (90208489)
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キーワード | バナジウム / 地下水 / 健康 / 地域差 / 富士北麓 / 微量元素 / 住民検診 / 地域相関研究 |
研究概要 |
富士山の地下水には微量元素バナジウムが比較的高濃度(約0.1mg/L)に含まれており、富士山周辺の住民はこの水を飲用し調理に使用している。近年、バナジウムを含む天然水の飲用が糖尿病患者の高血糖を改善することや、実験的に誘導した軽度のインスリン抵抗性を改善することが報告されている。もし、飲料水中0.1mg/L程度のバナジウムに明らかな効果があるならば、富士山周辺の住民の健康状態は他の地域と比較して良好であることも期待される。このことを検証すべく、本研究では富士北麓とその他の地域の健康状態を比較する地域相関研究を実施した。山梨の市区町村別死亡統計データを用い、標準化死亡比の95%信頼区間を計算したところ、富士北麓の全心疾患ならびに急性心筋梗塞は男女とも全国平均を上回っていた(山梨全体では、全国平均の範囲)。また、男性の全死因の標準化死亡比も全国平均を上回っていた(山梨全体では、全国平均より小さい)。生体試料中のバナジウム濃度を高感度分析装置ICP質量分析計(ICP-MS)で測定する際には、共存する塩化物イオンが妨害するため、試料を硝酸+過酸化水素で灰化後、バナジウムをキレート剤でクロロホルム抽出し、クロロホルム蒸発残留物を再び灰化してICP-MSでバナジウムを測定する方法を考案した。この方法によって、塩化物イオンの妨害を除くことが出来た。この方法を用いて、平成19年度に住民検診の際に受診者の同意を得て収集した生体試料中のバナジウム濃度の測定を行った。 本研究の結果からは、住民が飲料水等から摂取するバナジウム量が多い富士北麓地域住民の健康状態は、山梨県の他の地域と比較して良好であるとは考えられなかった。むしろ、男女ともに全心疾患ならびに急性心筋梗塞の標準化死亡比は山梨の他地域より高いことが明らかとなった。
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