研究概要 |
【目的】糖尿病性腎症の発症や進展に及ぼす遺伝と環境の相互作用を明らかとする。【方法】調査地区で同意の得られた成人401名(平均年齢63歳±14歳、男性187名、女性214名)について、身体組成・血液検査・尿検査、生活習慣調査などのベースラインデータを収集した。血液・尿所見が不備な者を除いた394名を慢性腎臓病(CKD)の解析に用いた。口腔粘膜より検体を採取し、DNAを抽出した287名について、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の遺伝子多型(I/D)をflorescent allele-specific DNA primer assay system を用いて判定した。【結果】CKD治療ガイドによる簡易MDRD法によるCKDの割合は26.9%で、日本人の平均18.7%より高かった。ステージ別の分類ではStage 1(GFR>90) 9.1%, Stage 2(GFR: 60-89) 64.0%, Stage 3(GFR: 30-59) 26.1%, Stage4(GFR: 15-29) 0.8%, Stage 5(GFR<15)0.0%であった。男性(n=185)に比べて、女性(n=209)においてCKDの頻度は有意に高かった(21.1%vs. 32.1%; p=0.017)。ACEのII型130名、ID型111名、DD型46名で、Dアレルの頻度は0.35で、Hardy-Weinbergの法則に従っていた。3群間で、年齢性、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、血糖、HbA1c、総コレステロール、HDL-コレステロール、血清クレアチニン値、尿中微量アルブミン等には有意差を認めなかった。重回帰分析では、年齢、性、血圧、ACEの遺伝子多型と独立して、BMIが推算GFR(eGFR)と有意に関連していた。【結論】地域におけるCKD対策として、血圧管理に加え減量対策も必要であると考えられた。
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