研究概要 |
【目的】糖尿病性腎症の発症や進展には遺伝、食事及び炎症(酸化ストレスを含む)などが複雑に関与する。糖尿病性腎症では体内で酸化されやすいsmall dense LDL(sdLDL)が増加している。しかし、アディポネクチンとsdLDLとの関連は明らかではない。【方法】対象は地域一般住民の成人男女229名(男性109名、女性126名;平均年齢66±11歳、範囲40~88歳;男性の平均BMI23.4±2.8kg/m^2、女性の平均BMI24.0±3.2kg/m^2)である。脂質改善薬服用している者は本研究から除外した。アディポネクチン濃度はELIAキットを用いて測定した。アディィポネクチン遺伝子の多型(SNP-11377, SNP45, SNP164, SNP276)はfluorescent allele-specific DNA primer assay systemで判定した。リポプリントシステムを用いてsd-LDLとLDL-コレステロールの粒子サイズを測定した。【結果】SNP45のT/Tキャリアは他のキャリアに比べ、アディポネクチン濃度が有意に低かった(7.6±5.1 vs.9.5±6.8μg/ml)。SNP-11377のGキャリアはCCキャリアに比べ、アディポネクチン濃度が有意に低かった(7.4±4.8 vs.9.4±6.8μg/ml)。他の多型ではアディポネクチン濃度と関連は認められなかった。重回帰分析では、年齢、性、BMI、腹囲、インスリン抵抗性(HOMA-IR)、レプチン、遺伝子多型、喫煙と独立して、アディポネクチン濃度が粒子サイズと関連していた。【結論】アディポネクチン濃度には遺伝子多型が一部関与しており、LDL-Cの粒子サイズには喫煙などと独立して、アディポネクチン濃度が有意に関連していた。糖尿病性腎症低減のためには、アディポネクチンを上昇させる取り組みが必要になると考えられた。
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