平成20年度は、「呼び寄せ介護」による転出が多いと指摘される中山間地域のうち、中高齢期の転入とその後の転出が多くみられる別荘地域を対象に、1. 縦断的調査による居住継続の実態とその関連要因の把握、2. 同地域住民対象のフォーカスグループディスカッション(FGD)および個人へのインタビュー、3. 元住民へのインタビュー調査を実施した。 1. 大規模別荘地を抱える自治体の65歳以上男女を対象に1997年に実施した調査の回答者252名とその家族を対象に、居住継続有無および居住中断理由、居住継続希望等に関する質問紙調査を行った。居住継続割合は約4割で推計による全国平均値と比較して低い傾向がみられた。居住継続/転出の関連要因を初回調査で測定した変数との関連から検討した結果、総合的移動能力が居住継続に負の関連を、私的支援および住居設備の整備度が正の関連を示していた。居住継続者の大多数が将来も居住継続を希望していた。 2. 居住継続意向や居住継続に重要な条件に関するFGD5回、および7名への個人インタビューを実施した。その結果、居住継続を左右する環境要因として、虚弱化した時点での医療機関や商業施設の利便性、交通機関等移動手段の充実、および近隣住民との関係づくりの機会・場所が、個人要因として同居家族の有無、別居子への介護期待が挙げられた。 3. 同対象地域から過去5年以内に転出し、現在は子ども宅の近くに居住する2名にインタビューを実施した。転出までのプロセスとして、別荘地における生活利便性の低さおよび別居子への将来的な介護期待が背景にあり、加齢に伴い将来の住まい方を考え始めたことを契機とし、別居子からの遠距離介護への遠慮、将来の独居生活への強い不安感、別居子宅近くに住居を確保できる見通しが転出意思決定要因として挙げられた。呼び寄せ後の生活上の課題として、社会活動性の低下および孤独感が挙げられた。
|