市町村でのポピュレーション・アプローチの概念整理、実施状況の把握、そして効果を明らかにすることを目的とした。概念は、社会的、物理的、情報的環境整備に整理することができた。2009年2月~8月に全国の市町村を対象とした自記式郵送調査を行った。 また厚生労働省等による各市町村の既存データと結合して分析を行った。郵送調査の最終的な回収率は77.1%(1385/1796)であった。その結果、市町村での各ポピュレーション・アプローチの実施割合は、保健委員等57.5%、食生活改善推進員等75.5%、市町村広報誌等95.4%、ケーブルテレビ・有線放送等48.3%、地域の新聞・ミニコミ誌等26.2%、全戸配布67.5%、回覧板等37.8%、新聞折り込み8.3%、街頭配布4.7%、庁舎等に配置38.1%、何らかの方法でチラシ等配布94.5%等であった。条例等の制定に関しては、健康づくり都市宣言や基本条例等の制定13.2%、タバコ対策に寄与する具体的な条例の制定7.4%、その他の健康に寄与する具体的な条例の制定4.9%であった。健康づくりに役立つ資材の無償配布または購入費補助の状況としては、ウォーキングマップ29.2%、腹囲用巻き尺28.2%、血圧手帳・記録用紙26.3%等であった。がん検診への効果をみるため、人口規模、高齢者人口割合、第1次産業人口割合を調整した重回帰分析を行ったところ、保健委員活動を行っている市町村は胃がん検診受診率が有意に3.33%高く、対象者1万人対の胃がん発見比は有意に1.12高い結果であった。また何らかのチラシ類の配布をしている市町村も有意に高い結果であった。本研究の限界に対応したさらなる研究が必要であるが、保健委員活動やチラシ類の配布等のポピュレーション・アプローチは一定の効果があると考えられる。
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