口腔領域における外傷は、乳幼児期に多く発生することが報告されている。しかしながら、口腔領域の外傷に関する研究は、大学病院歯科口腔外科に代表される病院での調査がほとんどであり、地域の歯科診療所を基盤とした研究はみあたらない。そのため、口腔領域の外傷についての疫学は、より重症な外傷のケースに偏っている可能性がある。本研究の目的は、佐世保市内の歯科診療所を受診した乳幼児における口腔領域の外傷について、発生報告書(インシデント・レポート)の作成を依頼し、同報告をもとに、乳幼児における口腔領域の外傷の現状を明らかにすることである。 本年度は、佐世保市内の小児歯科を標榜する1つの歯科医院において、過去に扱った乳幼児期における外傷の症例について、受傷児の年齢、受傷場所、受傷時間、受傷経緯、および受傷後の処置などに関する事前の予備調査を行った。また、セーフティ・コミュニティを目指して活動を行っている大分県中津保健所、および京都府亀岡市の訪問調査を行い、同地区が行う外傷発生動向調査(外傷サーベイランス)の現状を調査した。これらの調査結果をもとに、佐世保市歯科医師会学術担当理事会にて協議をかさね、現状に即したインシデント・レポート用紙を作成した。佐世保市内のすべての歯科診療所、および2つの病院歯科、合計130施設にインシデント・レポートを配布し、2008年1月から12カ月間の予定でインシデント・レポートの作成を依頼した。現在、インシデントレポートの収集と分析をすすめているところである。
|